第16回市民公開講座 開催報告

太田新田歯科医師会 

16回市民公開講座 開催報告

 

日時:平成27年11月14日(土)午後2:00~午後4:00

場所:太田市学習文化センター(太田市飯塚町1549-2)

主催:一般社団法人 太田新田歯科医師会

口の中のがんの怖さ

~手術しますか?それとも予防しますか?~

小雨が降り続く寒い陽気ではありましたが、足元の悪い中多くの市民の方々にお集まりいただき、第16回市民公開講座が開催されました。

今回は、群馬大学大学院医学系研究科顎口腔科学分野教授の横尾 聡 先生を講師としてお招きし、口の中の「がん」をテーマに御講演して頂きました。

 

口の中にできるがん「口腔がん」は、舌がん、上顎歯肉がん、下顎歯肉がん、頬粘膜歯肉がん(頬の内側の粘膜のがん)、口底がん(下の歯肉と舌の間のがん)、硬口蓋がん(上顎の真ん中の硬いところのがん)の6カ所をいいます。

口腔がんは、直接見ることができるため初期症状を発見しやすいですが、認知度が低く進行するまで放置されやすい病気です。標準治療は手術療法しかないため患者さんにとっては非常に大きな負担がかかります。しかし、早期の段階で適切な治療を行えば、9割は完治が見込める病気です。

口腔がんの年間罹患者数は全国で7,000人程おり、がんの中では頻度は少ないですが、進行した口腔がんの手術においては、顔面が欠損するのでQOL(Quality Of Life)が低くなってしまいます。しかし、血管縫合の技術の進歩によって再建手術を行うことにより、社会的生命の回復が可能になりました。ただし、切除手術と再建手術は同時に行うので手術時間が10時間以上かかることは珍しくありません。

群馬県では、口腔がんを扱っているのが群馬大学だけであり、そのうちの9割を口腔外科、顎顔面外科が扱っています。2013年においては年間121人の患者数があり全国で1位となりました。また、横尾教授が赴任されてから7年が経過し、以来行った200例以上の手術は1例の失敗もないという事でした。

講演では、口腔がんの手術写真を動画で紹介しながら、がんが進行すると顎の骨を削ったり、鼻や顔の皮膚、首のリンパ腺なども切り取る必要があり、「口の中の物をちょっととればいいというものではなく、非常に怖いものだという事を身に付けてほしい」と話されました。

口腔がんは約70%が歯科医院で発見され、全体の約80%が口腔外科で診療されています。また、喫煙や飲酒は発生率を高めることがわかっています。

発がんの前兆をキャッチするために気をつけてほしい3つの口腔粘膜疾患があります。食べ物を口の中に入れた時にしみる口内炎や、板状や斑状に白くなる口腔白板症、主に頬粘膜に見られ白色にレース状になる口腔扁平苔癬です。口内炎の多くは、1,2週間で治りますが、長く続く場合は要注意です。がんは小さいと痛みを感じないことが多く、そのために発見されにくく放置されてしまう病気です。がんが小さい早期の段階なら30分程度の簡単な手術で済み、転移する前の初期の段階で発見する事が治療の負担を大きく減らすことになります。毎日1回は口の中をチェック。日頃から口の中の事に注意して頂くことが早期発見につながります。そのためには、「禁煙節酒」に努めること、口腔がん検診を受診すること、定期的に歯科医院で検診すること。と市民の皆様にわかりやすく、大きな手術にならないよう予防することの大切さを説明され、終演となりました。

 

文責 太田新田歯科医師会 市民公開講座運営委員会

委員長 増田康展