第15回市民公開講座 開催報告

太田新田歯科医師会

15回市民公開講座 開催報告

 

日時:平成26年11月15日(土)午後2:00~午後4:00

場所:太田市学習文化センター(太田市飯塚町1549-2)

主催:一般社団法人 太田新田歯科医師会

 

本当は怖いお口の病気

~敗血症って何?~

 

毎年恒例となりました、太田新田歯科医師会主催の市民公開講座が、平成26年11月15日(土)午後2時より太田市学習文化センターにて、穏やかな秋晴れに恵まれ大勢の市民の方々にお集まりいただき、今年で15回目の開催をすることが出来ました。この場をお借りいたしまして、講師の先生方、関係者の方々、また、市民の皆様方に厚く御礼申し上げます。

第15回目となりました今回の市民公開講座は、“敗血症”をテーマに富士重工業健康保険組合太田記念病院の薬剤部長・山藤満(さんどう みつる)先生、救急科部長・秋枝一基(あきえだ かずき)先生、歯科口腔外科医長・伊澤和三(いざわ かずみ)先生の三名の先生方に御講演して頂きました。

まず最初に、薬剤部長の山藤先生より「これだけは知っておこう!抗菌薬の賢い使い方」の御講演が始まりました。

私たちの身の周りには、さまざまな病原微生物が存在しており、人や動物の体の中で増殖した場合を感染といい、それらに炎症(病気)を引き起こすことを感染症といいます。

微生物の病気を引き起こそうとする力(病原性:毒力と菌量)が人の抵抗力よりも強くなった場合に感染が成立します。微生物の数が増えて病原性そのものが強くなったり、もともと非常に強い場合は、誰でも感染してしまいます。逆に、人の抵抗力が非常に弱い場合、普段はなんともないような菌(平素無害菌)に感染し、病気になることもあります(日和見感染)。

病院や施設には、非常に抵抗力が低下した人(易感染性患者)が多く入院していますので、日和見感染が問題となっています。敗血症もこのような抵抗力の低下した人に発症しやすくなります。

新規の抗菌薬が開発されても耐性菌の感染症は無くなりません。つまり医療施設や私たちの周りから病原体を排除することは困難であり、病原体、感染症と共存することを理解しておかなければなりません。例えば我々自身が手洗い、うがい、マスクをして感染を防ぐ工夫や抵抗力を普段からつけておくこと、さらに感染症治療の際には抗菌薬を正しく使うことが大切です。特に経口抗菌薬(飲み薬)は服薬遵守(服薬コンプライアンス)の向上が治療の成功、失敗を左右します。感染症を正しく理解し治療が適正に行われることを期待したいとお話しされました。

続いて、救急科部長の秋枝先生より「敗血症とは・・・」の御講演がありました。

敗血症は、怖い病気でありながら一般的にはまだよく知られていません。医療従事者でさえもはっきりと敗血症の定義を理解していない人もいるのが現状です。毎年世界中で多くの方が敗血症で亡くなっており、日本も例外ではありません。

敗血症とは、感染症を契機とする全身性炎症反応症候群(SIRS)と定義されています。敗血症に見られる「感染」は、多くは細菌感染ですが、ウイルスや真菌の感染でも発症することがあります。「全身性炎症反応症候群」は①体温が38.0度以上または36.0度以下、②心拍数が90回/

分以上、③呼吸数が20回/分以上、④白血球数が12000/μl以上または4000μl以下、の4つの項目のうち2つを満たすものを言います。したがって、38度以上の熱があり、呼吸が「はぁはぁ」している場合、それだけでも敗血症になっている可能性があるわけです。

敗血症は早期に適切な治療を開始すれば、致命率は15%程度といわれています。しかしながら手遅れになってしまうと致命率は45%まで上昇します。

敗血症が疑われたら、直ちに病院を受診して下さいというお話でした。

最後に、歯科口腔外科医長の伊澤先生より「重症歯性感染症について」の御講演がありました。

細菌やウイルスに感染し、全身に炎症反応が拡がって臓器を傷つける敗血症は、さまざまな要因で発症します。口腔内には細菌の数が多く、歯周ポケットからの細菌の侵入により、頭頸部領域の歯性感染症でも小さなきっかけから重篤な症状へ変化することもあります。口腔内を穿刺するだけの膿の溜まりもあれば、頸部皮膚を大きく切開しなければならない場合や、皮膚が壊死してその部分の皮膚を取り除かなければならない場合もあります。

重症歯性感染症から敗血症性ショックになる場合の事前の判断は出来ません。健康な人でもなってしまい、どんな人がなってしまうのかわかりません。このような状態にならない為には、いつもと違うという状態に気づくことです。是非かかりつけ医を持っていただき、小さな変化を判断できるようにして下さいとお話しされました。

三人の先生方の御講演後、質疑応答に移り市民の方々から数多くの質問があり、全身のみならず口腔内への関心の高さが見受けられました。

虫歯や歯周病が原因で、口腔内から全身へと拡がっていく歯性感染症は、虫歯や歯周病の早期治療を行うことによりある程度は防ぐことが出来ます。その為には、かかりつけ歯科医院の定期検診が必要であり重要です。また、定期検診をきちんとしていてもなお感染症を患い、重篤な症状になる場合もあります。異常を感じた場合は、なるべく速くかかりつけの歯科医院を受診し、更に必要であれば口腔外科のある病院で精密検査や救急処置を受けなければなりません。

かかりつけ歯科医院と口腔外科を有する病院との緊密な連携をとることにより、重篤な症状や救急処置の必要がある患者さんが、スムーズに治療を受けられる体制を整えることが出来ます。

今後も、より一層地域医療連携を充実させ、市民の皆様のお口の中を含めた全身の健康づくりの一助となるよう日々の診療に努めていく所存であります。

 

太田新田歯科医師会 市民公開講座運営委員会

                委員長 増田康展