6歳でなぜ萌えないの?6歳臼歯~注意信号を見逃さないで

太田新田歯科医師会
ちえ美歯科医院
院長 大住 智恵美

 

6歳でなぜ萌えないの?6歳臼歯~注意信号を見逃さないで

皆さんこんにちは。10月になり来年度に小学1年生になる児童たちの健診である就学時健診の季節になりました。

私共歯科医は、虫歯や歯肉炎の発見だけでなく、顎や歯並びの異常もチェックいたします。

個人差があるから、などの理由で顎や歯並びの異常を経過観察したままにしていませんか?そこで、児童における歯並びの異常について最近際立って多くみられる現象とその注意点について今日はご説明したいと思います。

① 6歳児において6歳臼歯が萌えてこない、

② 7、8歳で乳歯の前歯が抜けていない、ぐらついてもいない、あるいは乳歯がぐらついていないのに永久歯が萌えてきてしまっている

これらは、その年齢において6歳臼歯や永久歯の前歯がはえきるだけの大きさの器に顎が成長できていませんよ、顎が小さいですよ、という大切なサインです。おおむね下の6歳臼歯が先に萌出し、その3,4か月後に上の6歳臼歯がはえてくればほぼOKです。

そして前歯に関しては永久歯の前歯4本がきれいに並ばない場合は顎の成長が遅れている可能性が非常に高いです。まずはこの経過地点を見逃さないようにしましょう。ゲームなどなかった時代、木登り、鬼ごっこ、泥んこになって子供たちは外で駆けずり回って遊んでいたものでした。

また、食事に関しても、現代では柔らかく、口に入れたらとろけるような感触のものが美味であると傾向が大幅に変化しています。このような生活の変化が顎の成長に影響を及ぼしていると推測できます。

顎だけ大きく成長させる、というのは自然の状態では非常に難しいので、全身の骨格を鍛えることが重要です。できれば、小学校に上がるまでは、ゲームや室内中心の遊びではなく、外で思いっきり遊ばせてしっかりとした骨格を形成させてあげるようにしましょう。

③ 中には9歳や10歳になっても上の6歳臼歯がはえてこないケースも見られます。

これは、下の顎に比べて上の顎の成長が遅れているという大切なサインです。上の顎は頭蓋骨に付随している骨です。頭蓋骨は6歳において成人の約90%にまで成長しています。そのため上の顎も頭蓋骨の成長の影響を受け、6歳児で成人の約80~90%にまで成長し、小学校高学年あたりになると成長が止まり始めます。

それに反して下の顎は成長ホルモンの影響を受けますので身長が伸び続ける限りは成長し続けてしまいます。したがって上の顎が小さいのにも関わらず、その状態を放置してしまいますとアンバランスな顔面になるだけでなく歯並びの異常も顕著に表れてきます。

特に日本人や韓国人、などの東洋人は、欧米人に比べると中顔面の前方への発達成長が遅れていて上の顎が小さい傾向に見られます。

この事実を踏まえますと、6歳でスクリーニング検査をした結果、特に上の顎が小さい場合は早期の治療が必要と思われます。6歳、もしくは小学校低学年での早期の発見であれば、成長期にある児童の成長を利用して顎の成長を加速させるような治療方法も可能です。

このような治療方法を用いることのできる専門医も増えてきていますので、少しでも心配なことがあれば、早期の受診をお勧めします。