2017/01/24
/ 最終更新日時 : 2017/02/27
太田新田歯科医師会
エフエムTARO
太田新田歯科医師会
小森谷歯科医院
院長 小森谷 和之
老後をそこそこ元気に過ごすために
「歳をとっても歯がある人は元気」という昔からの言い伝え、聞いたことありますよね。
実はこれ、科学的な根拠があるんです。
歯が残っていて自分の歯で噛めている方、そして、歯を失ってはいても治療を受け、入れ歯を使って噛めている方は、体力の衰えがなだらかであることが、近年の研究でわかってきました。
Q 歳のとり方って、個人差が大きいですよね。
90歳でジョギングしている人もいれば、早くから寝たきりになる人もいますし。自分は将来どんなふうに歳をとるのかな?
A 老後の健康がどうなっていくか気になるところですね。
全国の高齢者を20年にわたって追跡調査した資料によると、早くから寝たきりになる方は男性で19%女性で12%、反対に亡くなるまでずっと元気な、いわゆるピンピンコロリの方は男性で10.9%女性ではほぼ0%です。
つまりおおよそ8割の方は徐々に体力が低下して介護を受ける生活になって亡くなっていることがわかります。
「ひざが痛い」「動くのがしんどい」といいながら、買い物もゴミ出しもするし、がんばって病院にも通う。時には介助を受けても基本的には自立した生活が出来ているという方が8割ということですね。
Q 自分が高齢になったとき、体力低下を防いで長生きするには何に気をつけたらよいでしょう?
A 高齢者が虚弱になっていくことを「フレイル」といいます。
このフレイルの兆候としてご自分や周囲が気づきやすいポイントがいくつかあります。
一番目立つのは体重の減少です。運動不足や栄養不良により体重が減り、目に見えてふくらはぎが痩せてきます。それにつれて「疲れやすくなる」「重い物を持てなくなる」「歩くのが遅くなる」「出かける機会が減っていく」といった変化が起きます。
フレイルの特徴は、放っておくと悪循環になるところです。
筋肉が減る→疲れやすく運動量が減る→動かないからさらに筋肉量が減る→動かないから食欲がわかない→食事量が減りさらに筋肉が減る
もうひとつ注目すべきなのが体力の低下が気力の低下に結びついてしまう点です。筋肉が減って疲れやすくなる→足が上がらず転倒しやすいと感じる→自分に自信がなくなる→出かけるのが億劫になる→社交の意欲が低下する→出かけないからさらに体力が落ちる→さらに気力が低下する
Q 歯がある人は丈夫で長生きだそうですが、これってホントなんでしょうか?
A 「歯がある人は丈夫で長生きだなあ」というのは多くの歯科医の感じている臨床実感ですが、約1000人の高齢者の追跡調査をした結果これが事実ということがわかりました。調査ではかみ合わせに注目し8年間にわたり生存率を調べたところかみ合わせの良い人ほど生存率が高く、かみ合わせのない人ほど生存率が低くなっていることがわかりました。
Q 歯が丈夫な人はバランス感覚が良く転びにくいと聞いたことがあります。
本当ですか?
A 転倒してしまうかもという不安が高齢者のフレイルの悪循環を生むというお話をしました。実際のところ転倒は、厚生労働省の調査によれば、高齢者が寝たきりになる原因の12%あまりを占め、脳血管疾患や衰弱についだ大きなきっかけになっています。
歯とバランスの関係は、やはり科学的根拠があり、歯が20本以上残っている人と19本以下で入れ歯を使っていない人の転倒リスクを調べた結果、かみ合わせなのない方は20本上残っている方に比べ2.5倍も転倒のリスクが高いことがわかります。
またかみ合わせのない方は片足立ちでバランスをとる時間も良く噛める方に比べて半分くらいになってしますという研究結果もあります。
Q よく噛める人はボケにくいと聞いたことがありますが、本当ですか?
A これも調査結果があります。歯が残っている人ほど認知症の割合が低くなっています。ここで注目すべきは、歯はあまりないけれど入れ歯は使っている方のデータです。自分の歯で食べている方とほぼ変わりないことがわかりました。
理由としては、咀嚼、かむことによって前頭前野が刺激されることが実験からわかっています。
さらにお口は全身の中でも、繊細なセンサーと複雑な動きをする筋肉が集まっている場所です。それだけに良くかむことによって脳の広い部分を刺激するため認知症になりにくくなるのだろうと考えられています。