歯周病と全身のかかわり、予防歯科の重要性について

太田新田歯科医師会

おおたモール歯科
院長 八木 大輔

歯周病と全身のかかわり、予防歯科の重要性につい

口の中の健康は、生活をするうえでとても大切な要素です。しかし、日本人は先進国の中でも残存歯数という、歯が残っている本数がとても少ないのが現状です。 80歳で比べたときは、欧米に比べて半分以下しか歯が残っていないというデータもあります。

その理由は、歯科医院に対する意識の違いにあります。

歯科疾患は慢性疾患といって、悪くならないと症状が出ない場合がほとんどです。

逆に言えば、症状が出てからだと、病気がかなり進行している場合がほとんどです。なので、痛くなるまえに定期的に歯科医院に通うことが重要です。歯科医院に定期的に通い、早期発見早期治療をすることで、80歳で、歯を3倍程度残せることが分かっています。

また、歯周病は、心筋梗塞や糖尿病、肺炎などとの因果関係も報告されており、全身にも大きく影響しています。 高血圧や糖尿病の発見のために、血圧測定や採決をするのと同様に、歯医者さんから遠ざかっている人、最近少し違和感がある人など、歯科疾患の早期発見のために、お近くの歯科医院にぜひ足を運んでください。

 

意外と知らない知覚過敏

太田新田歯科医師会

もろ歯科医院

院長 毛呂 慎

意外と知らない知覚過敏

水や空気が冷たいこの時期、『歯がしみて困る』という方が増えます。個人的にはこの知覚過敏の治療がいちばん厄介だと感じています。別に命にかかわる病気でもないし、ちょっと治療すればすぐに治ってしまうというイメージですよね。

確かに明らかなむし歯があったり、歯周病で歯がグラグラしていれば分かりやすくていいのですが、問題なのはそれが明白でない場合が多いからです。

まずは比較的診断が簡単なパターンをお話しますと…

最も多いのは歯みがきが強すぎる場合です。要因としては歯ブラシの硬さ・動かし方・歯磨き粉・電動歯ブラシなどが挙げられます。一概に毛先が柔らかいのを使えばOKとも言えません。硬めが好きな方が柔らかめを使うと却って必要以上に強く磨きがちになって逆効果です。また電動歯ブラシはそれ自体の磨くパワーが大きいので、専用の歯磨き粉を使わないと歯が削れてしまいます。

…今日の本題に入ります。

歯の根元がえぐれていると一般的には磨きすぎと言われますけれど、意外に思われるかもしれませんが、結構『歯ぎしり』や『食いしばり』による場合が多いのです。歯は硬そうに見えて実は歯ぎしりをすることで撓(たわ)みます。(高層ビルが地震の時に揺れるのみたいに…)それで根元のエナメル小柱と呼ばれる細胞にヒビが入って煉瓦の壁がくずれるように剥がれていくのです。

一般的に歯ぎしりは就寝時に行われますから意識的にコントロールできませんので、ナイトガードと呼ばれるマウスピースの使用が効果的です。自覚症状がなくても頬の内側や舌の側面に歯の痕(あと)が付いていたり、起床時に肩こりや顎の痛みが著明な場合や歯の詰め物が頻繁に取れてしまう場合には歯ぎしりの存在を疑ってみてもいいかもしれません。

次に、レモンなどの柑橘系フルーツ、酢のもの・炭酸飲料の摂り過ぎです。「健康に良いから…」とおかずやご飯に酢をかけて食べる女性がいらっしゃいますが、歯の表面のエナメル質は酸に弱いですから…歯を守っているバリアをなくしてしまう事にもなります。

更に知覚過敏の歯の根元に詰め物がしてある場合は、一見するときれいで問題なさそうでも見えない所に隙間ができてる可能性もあります。

日常的にガムを噛んでいたり、スルメとか硬いものが好きな人は歯に亀裂が入っていたりする場合もあります。時間が経てば経つほど亀裂が深くなって、最悪の場合、歯が割れてしまうことさえあります。「普段は平気なんだけど、物を噛むとちょっと痛む」場合は早めに歯科医に診てもらう事をお勧めします。

原因が明らかであれば歯科医院における治療も比較的ラクなんですが、特定が困難な場合はコーティングの薬を塗るなどの軽めの内容から重症なら歯の神経を取るなど…徐々に手間のかかる内容へと試行錯誤しながら行なう事になります。

そもそも知覚過敏は原因歯の特定すら難しく一度の治療で完治することが少ないので、その点はご理解をお願いしたいところです。

老後をそこそこ元気に過ごすために

太田新田歯科医師会
小森谷歯科医院

院長 小森谷 和之

老後をそこそこ元気に過ごすために

 

「歳をとっても歯がある人は元気」という昔からの言い伝え、聞いたことありますよね。

実はこれ、科学的な根拠があるんです。

歯が残っていて自分の歯で噛めている方、そして、歯を失ってはいても治療を受け、入れ歯を使って噛めている方は、体力の衰えがなだらかであることが、近年の研究でわかってきました。

 

Q 歳のとり方って、個人差が大きいですよね。

90歳でジョギングしている人もいれば、早くから寝たきりになる人もいますし。自分は将来どんなふうに歳をとるのかな?

A 老後の健康がどうなっていくか気になるところですね。

全国の高齢者を20年にわたって追跡調査した資料によると、早くから寝たきりになる方は男性で19%女性で12%、反対に亡くなるまでずっと元気な、いわゆるピンピンコロリの方は男性で10.9%女性ではほぼ0%です。

つまりおおよそ8割の方は徐々に体力が低下して介護を受ける生活になって亡くなっていることがわかります。

「ひざが痛い」「動くのがしんどい」といいながら、買い物もゴミ出しもするし、がんばって病院にも通う。時には介助を受けても基本的には自立した生活が出来ているという方が8割ということですね。

 

Q 自分が高齢になったとき、体力低下を防いで長生きするには何に気をつけたらよいでしょう?

A 高齢者が虚弱になっていくことを「フレイル」といいます。

このフレイルの兆候としてご自分や周囲が気づきやすいポイントがいくつかあります。

一番目立つのは体重の減少です。運動不足や栄養不良により体重が減り、目に見えてふくらはぎが痩せてきます。それにつれて「疲れやすくなる」「重い物を持てなくなる」「歩くのが遅くなる」「出かける機会が減っていく」といった変化が起きます。

フレイルの特徴は、放っておくと悪循環になるところです。

筋肉が減る→疲れやすく運動量が減る→動かないからさらに筋肉量が減る→動かないから食欲がわかない→食事量が減りさらに筋肉が減る

もうひとつ注目すべきなのが体力の低下が気力の低下に結びついてしまう点です。筋肉が減って疲れやすくなる→足が上がらず転倒しやすいと感じる→自分に自信がなくなる→出かけるのが億劫になる→社交の意欲が低下する→出かけないからさらに体力が落ちる→さらに気力が低下する

 

Q 歯がある人は丈夫で長生きだそうですが、これってホントなんでしょうか?

A 「歯がある人は丈夫で長生きだなあ」というのは多くの歯科医の感じている臨床実感ですが、約1000人の高齢者の追跡調査をした結果これが事実ということがわかりました。調査ではかみ合わせに注目し8年間にわたり生存率を調べたところかみ合わせの良い人ほど生存率が高く、かみ合わせのない人ほど生存率が低くなっていることがわかりました。

 

Q 歯が丈夫な人はバランス感覚が良く転びにくいと聞いたことがあります。

本当ですか?

A 転倒してしまうかもという不安が高齢者のフレイルの悪循環を生むというお話をしました。実際のところ転倒は、厚生労働省の調査によれば、高齢者が寝たきりになる原因の12%あまりを占め、脳血管疾患や衰弱についだ大きなきっかけになっています。

歯とバランスの関係は、やはり科学的根拠があり、歯が20本以上残っている人と19本以下で入れ歯を使っていない人の転倒リスクを調べた結果、かみ合わせなのない方は20本上残っている方に比べ2.5倍も転倒のリスクが高いことがわかります。

またかみ合わせのない方は片足立ちでバランスをとる時間も良く噛める方に比べて半分くらいになってしますという研究結果もあります。

 

Q よく噛める人はボケにくいと聞いたことがありますが、本当ですか?

A これも調査結果があります。歯が残っている人ほど認知症の割合が低くなっています。ここで注目すべきは、歯はあまりないけれど入れ歯は使っている方のデータです。自分の歯で食べている方とほぼ変わりないことがわかりました。

理由としては、咀嚼、かむことによって前頭前野が刺激されることが実験からわかっています。

さらにお口は全身の中でも、繊細なセンサーと複雑な動きをする筋肉が集まっている場所です。それだけに良くかむことによって脳の広い部分を刺激するため認知症になりにくくなるのだろうと考えられています。