喫煙と歯周病

太田新田歯科医師会

幸生歯科医院

山田 幸生

タバコが歯周病とその治療に大きな影響があることは、意外に知られていないのではないかと思います。

歯周病とは歯を支えている歯肉や骨に起こる炎症性の疾患です。歯肉から出血したり、膿が出たりして重症になると、歯がグラグラになり、やがて抜けてしまいます。

基本的には細菌による感染症です。しかし、発症や進行には、多くの危険因子が関与しています。

例えば糖尿病などの全身疾患、ストレス、歯ぎしり、食いしばりなどの咬合習癖、女性ホルモンの変化、喫煙などです。これらの中で喫煙が最大の危険因子です。喫煙されている方の歯肉はニコチンによる血管収縮作用により、慢性的な血行不良をおこしています。そのため歯肉に酸素や栄養が欠乏します。

また細菌と戦ってくれる白血球が大幅に減少してしまいます。それに炎症があっても出血しにくくなっているため、気付きにくい傾向にあります。喫煙者は喫煙未経験者の4倍歯周病にかかりやすく、本来の歯の寿命が10年短くなり、2倍多く抜けると言われています。

歯周病の治療は患者自身によるブラッシング、歯科医院での歯垢、歯石の除去により細菌を減らし、かみ合わせのずれがあれば調整を行うなど、マイナスの要素を取り除き、生体が治癒できる環境を作るのが中心です。

しかし、先程話しましたように喫煙されている方の歯肉は血行不良により、治癒力が非常に乏しく、薬も効きにくいため進行を止めることも難しいのです。長い間の喫煙によってダメージを受けた組織は禁煙をしても元通りにはなりませんが、治癒力は少しずつですが回復していきます。1日でも早くやめていただくことが大切なのです。「タバコが体に悪いのは分かっているよ」とみなさんおっしゃいますが、まだまだ軽く考えている方が多いように思います。

日本ではタバコ関連疾患で、年間約20万人の方々がお亡くなりになっています。受動喫煙でも7千人です。「習慣だから」と何気なく毎日吸い込んでいるその煙。今一度立ち止まって考えてみませんか?日々に暮らしが10年後20年後の自分を作ります。

大切な家族のため、ご自分のため、1日も早く、タバコから解放されて自由になりましょう。

私たち歯科は、みなさんの禁煙を応援しています。

ノド飴とムシ歯

太田新田歯科医師会

おおばら歯科医院

松本 文男

長く続くノドの痛みや、咳などで、普段から飴をなめる習慣がある方もいらっしゃると思います。ノドがつらい時に、たまになめる程度なら何も問題ありませんが、飴が習慣になり、次々と長時間なめ続けるようになっている方は、ムシ歯に気をつけて下さい。

我々、日常の診療の中で、久しぶりに来院された方のお口に、突然ムシ歯が多発していて驚く事があります。不思議に思い、良く話を伺うと、実はノドの調子が悪くて四六時中ノド飴をなめているということがありました。また別の方ですが、禁煙をしてから気を紛らわすために、いつも飴を口に入れていると言う事もありました。ほとんどの飴は砂糖を多量に含んでいます。それが絶えず口の中にあった事で急激にムシ歯が出来てしまったと考えられます。

甘いものがムシ歯を作るということは、良く知られていると思います。口に砂糖などの糖類が入ると、ムシ歯菌によって酸が作られ、口の中が酸性になり歯が溶け始めます。歯を磨けばすぐ元に戻りますし、たとえすぐに歯磨きしなかったとしても、通常は唾液の作用でしだいに中和されます。しかし、続けて長時間飴をなめているような時には、その間ずっと口の中が酸性の状態が続き、ムシ歯が進行してしまうわけです。

ノド飴によるムシ歯を防ぐには、まず第一に口の中を長く酸性の状態にしない、つまり飴を何個も何個も続けて、長く舐め続けないようにすることです。出来るだけ必要最小限の量にした方がいいです。そして第二にキシリトールなどシュガーレスの飴を選ぶようにすることです。ただ気をつけていただきたいのは一般的なシュガーレス表示は糖類が0.5%未満のものを指し、必ずしも砂糖がゼロとは限りません。シュガーレスだからといってムシ歯になる恐れが無いわけではありませんので、過信しては行けませんが、そうで無いものよりはムシ歯のリスクは減少します。ノド飴を選ぶ時には成分表示の、特に糖質に良く注意してみて下さい。

ノドがつらい人にとっては切実な事ですが、ノド飴の常用はむし歯を作りやすいと言うマイナス面がある事を認識していいただき、またノド飴だけに依存せず、水分摂取やうがいなど他の方法も併用して対処していただきたいと思います。

そして、しばらく飴を手放せないでいた方は、ムシ歯が出来ていないか、ぜひ歯の検診を受けて下さい。

栄養と口の健康

太田新田歯科医師会

小森谷歯科医院

小森谷 和之

体の機能を整え、正常な日常生活を営むためには、規則正しい食生活が大切なことはほとんどの人が知っている事実です。今回は口腔疾患の予防の一環として栄養のことについて考えてみようと思います。

栄養素は、大きく①糖質②たんぱく質③脂質④ビタミン⑤無機質に分けられ、これを五大栄養素と呼びます。

歯の組成と栄養素

歯はコラーゲンというたんぱく質から出来た繊維の網に無機質であるカルシウム、リン、ミネラルが硬く結合して作られます。つまり歯が作られるとき、すなわちお母さんのおなかにいるときから、永久歯が完全萌出する中学生くらいまでは、良質のたんぱく質(魚介や肉、大豆など)と、無機質(主にカルシウム・リンは歯や骨の形成(石灰化)の材料になります。また、無機質のうちマグネシウムやフッ素も歯の形成に必要です。)の摂取が必須となります。また、ビタミンのうち、ビタミンAとC(主に野菜により摂取)は歯の形成時に大きなかかわりを持っています。ビタミンDもカルシウムの吸収に重要です。

むし歯と栄養素

むし歯と関係の深い糖質(穀類等、炭水化物)ですが、糖質そのものは、そのほとんどがエネルギー源となるため非常に大切な栄養素なのです。糖質、特にショ糖は、これを摂取し口腔内にとどまることで、口腔内の菌により分解され酸を産生し、これが歯の表面をおかします。したがって、砂糖(ショ糖)を含む食品を多く摂取すると、むし歯につながることが多いのです。

歯周疾患と栄養

歯周疾患に対する栄養的な考えは、局所因子として歯周組織に及ぼす食品の影響、全身的因子として歯周組織に及ぼす影響といった二つの立場から考えられます。

糖質は、局所的な因子として、むし歯と同様に歯周疾患に深く関与しています。すなわち、細菌に対して、栄養分を与えるとともに、歯面に歯垢として細菌と付着します。

タンパク質の欠乏により、歯周組織は局所刺激による炎症と変性を受けやすくなります。、タンパク質の適度な摂取が、歯周組織の抵抗と回復に強い影響を持っているといえる。

ビタミン類の欠乏は、直接的な因子としては働かず、歯周疾患を進行させる二次的な効果を示します。