歯周病と糖尿病の関係

 歯科で扱う病気は、虫歯と歯周病が、ほとんどです。
今回は、歯周病と糖尿病の関係についてお話しさせていただきます。

歯周病は、自覚症状が出にくい病気ですが、実は、15~19歳の約65%、20~29歳で約75%、30歳以上では、80%以上の人が歯周病になっています。
歯ぐきが腫れたり、進行すると歯のまわりの骨が溶けてしまい歯を失う事もあります。
また歯周病は、歯だけの問題にとどまらず、全身の病気、例えば、心臓病、脳卒中、肺炎を誘発すると言われています。
最近の研究では、その他に糖尿病とも密接な関係、つまり歯周病は、糖尿病を悪化させる事が、わかってきました。

その関係を説明すると、歯周病によって歯ぐきが炎症を起こします。
その炎症によってケミカルメディエーターという成分が増えて糖分の代謝を妨げます。さらに肝臓の機能をにぶらせます。
そして、血液中の糖の濃度を下げるホルモンであるインスリンを作用しにくくさせて糖尿病を悪化させます。 

反対に、糖尿病も歯周病を悪化させます。
その理由は、高血糖があげられます。
血液中に糖分が多いと先ほどのケミカルメディエーターが過剰に作られます。
過剰なケミカルメディエーターは、歯周組織を破壊します。
また、糖尿病の人は、唾液の量が減り口がかわきやすくなりがちなので、歯垢や歯石がつきやすく歯周病が悪化しやすいのです。
こうして、糖尿病の患者さんは歯周病にかかりやすくなり、すでに歯周病にかかっている人は状態が悪化しやすくなるのです。

ただし反対に歯周病が改善されれば、糖尿病にもいい結果が期待できますし、糖尿病が改善されれば、歯周病にもよい効果が期待できます。

歯周病も糖尿病と同じく、いわゆる生活習慣病です。
規則正しい生活、ストレスの少ない生活(ストレスのない人はいませんが、、、、)を心がけて下さい。
前述のように歯周病は、自覚症状があまりありません。
歯科医院は、あまり行きたくない場所でしょうが、定期健診を受けて歯石もとってもらってください。

喫煙と歯周病

歯周病とは、歯を支えている組織に起こる疾患です。
重症になると、歯がぐらぐらになり、膿がでてやがて歯がなくなってしまいます。
歯を失う原因のトップです。
歯周病は細菌による感染症です。
しかし、その発症や進行には、多くの危険因子が関与しています。
例えば、糖尿病などの全身疾患、ストレス、歯ぎしり、くいしばりなどの咬合習癖、女性ホルモン の変化、喫煙などです。

これらの中で、喫煙が最大の危険因子であること。
喫煙者は喫煙未経験者の4倍の確率で歯周病に かかりやすいことが、アメリカの研究者によって、1950年代に明らかにされました。
また、歯の寿命が10年短くなり、2倍多く歯が抜けるとも言われています。
これは、ニコチンによる血管収縮作用により、歯肉が慢性的な血行障害を起こし、酸素や栄養が欠乏したり、細菌と戦う白血球が大幅に減少したりするためです。

歯周病は、むし歯と違い全体的に進行していくため、多くの歯を早期に失うことになります。

歯周病の治療は、患者さん自身がブラッシング、歯科医院での歯垢・歯石の除去によって、まずは細菌を減らしていくことが必要です。
しかし、喫煙されている方の歯肉は、治癒力が乏しく、薬も効きにくいため、進行を止めることが難しいのです。

私たちは、日々の診療において、患者さんに歯や歯肉なあらわれる喫煙の影響が、はっきりと分かります。
「この方は喫煙していなければ、こうはなっていなかったのに・・・。
ここまま吸い続ければ、こうなってしまうなあ。」と思うことがよくあります。
歯を支えている骨が、年齢以上に吸収してしまったレントゲンをみていただき、禁煙の必要性を説明しても、簡単にはやめられません。

長い間タバコのダメージを受けた組織は元には戻りませんが、治癒力は少しずつですが回復していきます。
一日でも早くやめていただくことが大切です。
それが何よりの治療になるのですから。

「タバコが、体に悪いのは知っているよ。」とみなさんおっしゃいます。
しかし、タバコの煙に、含まれている成分を、お聞きしてもニコチン、タールぐらいしか、ご存知ない方がほとんどです。
タバコの煙には、4000種類以上の化学物質、200種類以上の有害物質、40種類以上の発ガン物質が含まれています。
例えば、一酸化炭素、ヒ素、カドミュウム、ホルムアルデヒド、ダイオキシンなど、いずれも猛毒です。
まずは、毎日吸い込み、体に入れている煙の本当の姿を知っていただくこと、それが、禁煙の第一歩です。

なお、副流煙も度合いによっては、同様の影響があるのでご注意いただきたいと思います。

歯をぶつけた時どうしますか?

春から秋にかけては、外で遊んだり、スポーツをしたり、活動することが多い時期ですが、それに伴い、怪我をする機会も多くなります。
特に小さいお子さんを持つお母さんは、目を離した隙に、大声で泣く我が子に驚くことがあります。

大人でも、子供でも、前に倒れた時、手がふさがっている状態だと顔をぶつけてしまい、前歯が欠けてしまうこともあります。
ボール、ゴルフクラブ、ラケット、我が子の頭や足など、その他、予想もしない力が顔めがけてぶつかってくることもあります。

傷から出血し、歯が欠けたり、抜けたりして大慌てしますが、そんな時どのようにしてから歯科医院や専門医にかかるのか、少しお話しておきます。

 まず、歯が欠けた時ですが、少し欠けた場合は、歯の中の神経などに直接影響が無ければ、比較的軽症です。
ただし、強くぶつけていると、歯が揺れたりするので受診が必要になります。

次に、大きく欠けた場合ですが、歯の中の神経が欠けたところから淡紅色に見えていることがあります。
後に強い痛みが出たりするので、欠けた部位をあまり汚さず、日数が経過しないうちに受診します。
そして、歯が抜け落ちたり、歯肉にめり込んだりする場合もあります。
めり込んだ歯は、歯科医院で引き出してもらってください。
自分で引っ張って落としてしまったら、治り方に影響するし、骨にヒビが入っていたりすると出血が多くなることもあります。

抜けてしまった場合は、もう一度、元の位置に戻して固定しておく方法(再植術)もあります。
ただし、抜けた歯の根が折れたりせず、清潔であり、受傷してから短時間であるほうが良いとされています。
口の中で抜けたら、そのまま口の中に入れて持っていくと良いですが、もし、落ちてしまったら、清潔な水や生理食塩水に入れて持っていくようにしてください。
学校などで歯が抜けた場合は保健室に歯を入れる保存液が用意されているので、先生に話すと良いでしょう。
くれぐれも、そのままポケットなどに入れて持っていかないようにしてください。
一言で「歯をぶつける」と言っても口の中やその周囲は複雑で、歯を支えている骨にもヒビが入る可能性があります。
また、受傷と同時に唇や舌を傷つけたりすれば、唾液によって大量に出血しているように感じます。
まずは、動揺している心を落ち着かせて、かかりつけの歯科医院などに連絡してください。

受診の際には、いつ、どこで、どのように怪我をしたか、来院までの経過を話す必要があります。
普段から使っている薬があればその薬の資料を持ち、怖がらずに歯科医院を受診してください。

ブラキシズムについて

ブラキシズムという言葉はあまり聞き慣れない言葉だと思いますが、これはお口やその周辺の器官にみられる習慣性に癖の一つで、代表的なものには歯ぎしりや食いしばりなどがあります。
この歯ぎしりや食いしばりがなぜ問題なのかというと、歯や周囲の骨などが受け止める咬む力は、個人差がありますが、強い人では100kgを超えるとても大きな力です。
ブラキシズムの場合、その大きな力が持続的に加わるため、食べる時の様に一瞬だけ強い力がかかる場合よりも、ずっと大きな影響が出るのです。
歯の変化としては、
● 歯がすり減る ● 歯がしみる(知覚過敏) ● 冠や詰め物がはずれる
● 歯が割れる などがあります。
また、他の様々な器官への影響として、 ● 顎関節症(あごの障害)
● 口の周りの筋肉の痛み ● あごのずれ ● 顔面の変形
● 頭痛、肩こり などが起こる事があります。
しかし、ブラキシズムは無意識で行われますので、日中起きている間でも無意識に食いしばっていたり、夜寝ている間に歯ぎしりしていたりと、自分では気づきにくいものなのです。
またブラキシズムがなぜ起きるのか、そのメカニズムについてはまだ十分には解明されていないのですが、
咬み合せの異常や日常生活でのストレスが原因と考えられています。
ブラキシズムへの対応としては、
● 日中、唇や頬・あごなどの周りの力を抜き、咬み合せている事に気づいたらすぐ離す
● 就寝時に、極力悩み事や考え事をせず、リラックスしたイメージで休む
● 頬づえをつく癖があると、噛み締めやすくなるので、注意する
● 治療が必要な歯はきちんと治しておく
● 歯科医院で、歯ぎしりから歯やあごの骨を守るため
ナイトガードと呼ばれるマウスピースの様なものを作り使用する
などがあります。気になる症状がある方は、歯医者さんに相談してください。

歯の冷凍保存

皆さんも臓器移植について新聞やテレビなどで聞いたことがあると思います。
歯科でもけがをしたり、通常残せないといわれる歯に対して歯をいったん抜いて外で治療して戻したり、歯がないところに必要性のない歯を移植したりする治療法が あります。
最近では凍結保存して戻すことも可能となっています。
この治療で重要となってくるのが歯の保存法です。
歯は乾燥した状態にすると戻しても骨に溶かされてなくなってしまいます。
歯が溶かされないようにするのに重要なのが歯根膜(歯の周りのクッション)です。 このクッションが歯を守るのです。
歯の移植再植は最も新しく最も古い治療法といわれ、紀元前にはすでに行われていたと いう記録があります。
しかしながら予後は良くなかったといわれています。
しかしながら医学の進歩とともに臓器保存液を用いて歯を長期間保存可能になり冷蔵で4日間ほど抜いたまま保存可能という研究がされています。
凍結保存の場合は何十年も可能です。
ただ凍結保存には多額の費用がかかり一般には使用されにくい状態となっています。
けがで歯が抜けたときの保存液は15年以上前にアメリカで販売され日本でも 最近になって国産の保存液が使用できるようになりました。
また凍結保存法は北欧で進んでおり、デンマークでは10年以上前から歯牙バンク (凍結保存)をおこなっております。
日本でもやっと広島大学で最近行えるようになりました。
将来、歯の治療も痛くなったらその日は抜いて、次の日に治療を終えた歯を戻して おしまいとなったり人工的に作られた歯に入れ替えるようになる日が近いと思います。
そう すればあのいやな音や長時間口をあけることもなくなりますね。