第24回市民公開講座 開催報告

太田市・太田新田歯科医師会

第24回市民公開講座 開催報告

日時:令和5年11月19日(日) 午後2時~午後4時

会場:太田市宝泉行政センター 多目的ホール(太田市西野谷町38‐2)

主催:太田市・一般社団法人 太田新田歯科医師会

後援:太田市教育委員会・太田保健福祉事務所・太田市医師会

太田市薬剤師会・群馬県看護協会太田地区支部・太田栄養士会

太田歯科技工士会・群馬県歯科衛生士会東毛支部・群馬県歯科医師会

 

ご存知ですか?オーラルフレイル
~お口の機能を維持するために~

 

コロナウイルス感染症の影響も落ち着き、昨年に続き令和5年度 第24回市民公開講座が感染症対策に留意して開催されました。暖かな晴天に恵まれ、160名の市民の皆様にご参加いただきました。

今回は、オーラルフレイルについて、お口の健康管理が全身の健康に深く関わり、お口の機能を維持向上させることが健康寿命の延伸にどのように繋がるのかというお話しして頂きました。

 

演題:オーラルフレイルを考えてみましょう

講師:寺中 智 先生

 

(足利赤十字病院 リハビリテーション科 口腔治療室長)

寺中 智 先生

 

世界では34%の人がお口の中の治療を受けていないというデータがあります。日本ではほとんどの人が歯科医院で治療を受け、今では高齢者治療先進国となっており、歯周病や虫歯だけの治療ではなく口腔機能が注目されてきています!!そして、かかりつけ歯科医院(定期受診している歯科医院)を持っている人は長生きするというデータもあります。歯科医院にかかっていれば何故長生きするのでしょう?

オーラルフレイルとは? オーラル(お口)のフレイル(衰え)

  • オーラルフレイルの認知度(H28とR2の比較) 神奈川県歯科医師会調査

オーラルフレイルという言葉をご存知ですか?20歳以上の県内在住者の患者又は当該診療所が訪問診療を行った患者5,845人を対象に調査

H28:知らない82.5% 言葉は知っている10.8% 意味もわかる3.3% 不明3.3% 認知度14.1%

R2  :知らない67.2% 言葉は知っている19.9% 意味もわかる8.7% 不明8.7% 認知度約30%

日本歯科医師会では2025年までに認知度50%にする事を目標にしている

  • フレイル(Frailty)には多面性がある。

・身体の虚弱 ― フィジカルフレイル
・社会性の虚弱 ― ソーシャルフレイル
・認知 心理 精神の虚弱 ― メンタルフレイル

フレイルとサルコペニア

サルコペニア ― 骨格筋量低下・筋力低下・身体機能低下

身体的フレイル ― 体重減少・易疲労感・身体活動低下・筋力低下・身体機能低下

この二つには筋力低下・身体機能低下の共通点があり、このことから食欲低下になり、さらに低栄養になり、そしてサルコペニアが進んでしまう。

  • 口腔機能での「食べる」に注目!

・口から食事を摂ることが栄養摂取効率が良い
・味わうことで感性が豊かになる。
・色んな人と食べることで美味しさを共有できる
・しっかり咀嚼することで脳血流量の活性化

  • 高齢者における食力

・栄養(栄養摂取・バランス、栄養状態)
・社会性 心理(こころ) 認知 経済(貧困)=介入しにくい
・身体(サルコペニア)
・多病(基礎疾患) 多剤併用=介入しやすい
・口腔‐嚥下機能(残歯、咀嚼、嚥下、口腔衛生、等)=介入しやすい

  • 健康長寿のための3つの柱

『栄養』 食・口腔機能 ①食事(バランス)②口腔内の定期的管理(歯科受診)
『社会参加』 就労、余暇活動、ボランティア①お友達と食事②前向きに社会活動
『身体活動』 運動、社会活動など①ウォーキング②筋トレちょっと頑張る
『栄養』と『社会参加』に介入すれば『身体活動』は付いてくる。

サルコペニア(低四肢骨格筋量・低筋力・低身体機能)にならないためには、社会性(人とのつながり、生活の広がり、誰かと食事)を低下させないことが重要!! まさにコロナ渦!!

  • フレイルと口腔機能が関連している ― フレイルドミノ

社会性の低下がきっかけとなり、運動量の低下→精神・心理の低下→口腔状態の低下→栄養機能の低下→身体機能の低下とドミノ式に低下していく。このフレイルドミノを止めるには予防が重要である。

オーラルフレイル →わずかなむせや食べこぼし、滑舌の低下といった「老化による口腔機能低下を加速させている原因」を自分事にする概念 ⇒国民の啓発に用いる用語(キャッチフレーズ)

  • オーラルフレイルの概念(2019年度版)

フレイルへの影響度

第1レベル 口の健康リテラシーの低下

・社会的フレイル・精神心理的フレイル・自発性の低下➡
・不十分な口腔健康への関心➡
・歯の喪失リスクの増加

ポピュレーションアプローチ

第2レベル 口のささいなトラブル

・滑舌低下・食べこぼし・噛めない食品の増加・むせ➡
・食品多様性の低下・食欲低下
地域保健事業、介護予防による対応

 第3レベル 口の機能低下(口腔機能低下症)

・口腔不潔 乾燥・咬合力低下・口唇 舌の機能低下・咀嚼機能 嚥下機能低下➡
・低栄養・サルコペニア

地域歯科診療所で対応

第4レベル 食べる機能の障がい(摂食嚥下障害)

・咀嚼障害・摂食嚥下障害➡
・栄養障害・運動障害・要介護

専門知識を持つ医師・歯科医師による対応

 

  • 口腔関連機関における機能低下への悪循環

歯が抜ける・歯が痛い➡かめない➡柔らかいものを食べる➡かむ機能の低下➡食欲の低下

➡サルコペニア

歯がないということは、噛めなくなり、食べられなくなる。しかし調理することによって食べやすくする事ができる!!

  • 口腔の虚弱(オーラルフレイル)は身体的フレイルや死亡リスクとなる

 対象者:高齢者2044人

 評価項目(6項目中3項目以上の該当者をオーラルフレイル)

    1. 祖役能力
    2. 口腔巧緻
    3. 舌運動の最大力
    4. 主観的咀嚼能力低下
    5. むせ
    6. 残存指数20歯未満

「オーラルフレイル」の人が抱えるリスク

身体的フレイル 2.4倍

サルコペニア 2.1倍

要介護認定 2.4倍◎

総死亡リスク 2.1倍◎

 

オーラルフレイルのセルフチェック 2023年版(案)

2つ以上の項目が該当→オーラルフレイルと定義

  1. 歯が少ない 残存指数で評価
  2. 咀嚼困難 半年前と比べて硬いものを食べるのが難しくなった
  3. 飲み込みにくい お茶や汁物等でむせることがある
  4. 口腔乾燥感 口が渇くことがよくある
  5. 滑舌低下 普段の会話で言葉で、言葉をはっきりと発音できないことがある

 

  • オーラルフレイルの予防

口腔体操でオーラルフレイルを予防

【ブクブクうがい】と【ガラガラうがい】を意識して行う事によって複雑な口腔機能が鍛えられる

舌・口腔周囲の筋力負荷訓練

舌の筋力負荷訓練

スプーンを用いて舌の上から押し、その力に抵抗して舌でスプーンを押し返す

口唇の筋力負荷訓練

ストローを唇に挟んだまま引っ張り、その力に抵抗する

  • 口腔機能低下症とオーラルフレイル

オーラルフレイルは、わずかなむせや食べこぼし、滑舌の低下といった口腔機能が低下した状態を示すものであり、国民の啓発に用いる用語(キャッチフレーズ)である。

一方、口腔機能低下症は、検査結果に基づく疾患名である。従って、それぞれ区別されるものではなくどちらも重要な概念であり、国民へ口腔機能に関心を持つことの重要性を啓発し、その結果、歯科医院を受診して口腔機能低下症の検査を受けるということが一般的になることが望まれる。

  • 歯科医院での検査

①口腔不潔(舌の汚れ)
舌苔付着度(TCI)
舌苔スコアの基準 舌を9分割し舌苔スコアを記録
スコア0 舌苔は認められない
スコア1 舌乳頭が認識可能な薄い舌苔
スコア2 舌乳頭が認識不可能な厚い舌苔
舌苔インデックス(TCI)=スコアの合計(0~18点)/18×100% 50%以上が評価基準

②口腔乾燥(口の乾燥)  ①②〔口腔内環境の評価〕

1) 口腔水分計による計測 舌先端から10㎜の舌背部分を計測機(ムーカス)を使用し測定
27.0未満が測定基準

2) サクソンテストによる評価

・乾燥重量 2gのガーゼを用いる(タイプⅢ医療ガーゼ、7.5cm四方)
・乾燥したガーゼを2分間咬み、唾液をガーゼとともに一塊に回収、重量を測定し増加重量を唾液量とする。2g/2分以下が判定基準

③咬合力低下(噛む力)

    1. 感圧フィルムによる咬合力の計測
      デンタルプレスケールⅠ・バイトフォースアナライザ使用
      プレスケール 200N未満・プレスケールⅡ 500N未満が判定基準
    2. 残存指数(残根と動揺度3の歯を除く)
      20本未満(19本以下)が判定基準

④舌口唇運動機能低下(舌の動き)

オーラルディアドコキネシス 5分間での合計発音数を計測し、1秒当たりの回数を算出
/pa/:口唇の運動機能 /ta/:舌前方の運動機能 /ka/:舌後方の運動機能
それぞれ1秒当たりの回数がいずれかで6回未満が判定基準

⑤低舌圧(舌の力) ③ ④⑤[個別的機能の評価]

JMS舌圧計(JMS)にて最大舌圧の計測(義歯使用者は、装着した状態で測定)
30㎪未満が基準値

⑥咀嚼機能低下(噛みつぶす力)

      1. グミゼリーを用いたグルコース溶出量による咀嚼能率検査
        グルコセンサー使用 100㎎/㎗未満が判定基準
      2. 咀嚼能率スコア法による評価
        咀嚼能力測定グミゼリー使用 粉砕程度スコア2以下が判定基準

⑦嚥下機能障害(飲む力) ⑥ ⑦〔総合的機能の評価〕

      1. EAT-10 それぞれの問いを5段階で回答(0点:問題なし~ 4点:ひどく問題)
        合計点数3点以上が判定基準
      2. 聖隷式嚥下質問紙 それぞれの問いをA,B,Cで回答
        Aが1つ以上が判定基準
  • 症例検討

入れ歯は使えているという入院患者さんでしたが、口腔内には上顎義歯のみ装着されており下顎は無歯顎。また、別の患者さんは壊れた入れ歯のままであった。義歯の修理や新製することによって咀嚼機能が改善され以前よりも上手く食事が可能となった。また、歯科医師や言語聴覚士による咀嚼や嚥下のトレーニングを行うことにより、口腔内環境が整い食事がしやすくなった。

  • Take home message

 ・オーラルフレイルで国民的ムーブメント
・口の機能の限界を知りましょう
・かかりつけ歯科医院を持ちましょう
・セルフチェックをして歯科医院で管理
・年を重ねても「おいしく元気、ごはんがうまい!」

なにか口のことで些細なことがあったら歯科医院を受診しましょう。今日の講演が皆様の健康に寄与出来れば幸いです。と締めくくり第24回市民公開講座は終焉となりました。

―食べること、健康であること、美しくあること、全ては人々の幸せのために!―

第24回市民公開講座  第24回市民公開講座 

文責 太田新田歯科医師会 市民公開講座運営委員会 増田康展

第24回市民公開講座を開催します

日 時 令和5年11月19日(日) 14:00~16:00 (開場13:30)

場 所 太田市宝泉行政センター (太田市西野谷町38-2)

テーマ

「 ご存知ですか?オーラルフレイル ~お口の機能を維持するために~ 」

演 題 オーラルフレイルを考えてみましょう

講 師 足利赤十字病院 リハビリテーション科 口腔治療室長 寺中 智 先生

定 員 280人

入場料 無料

主 催 太田市・一般社団法人太田新田歯科医師会

※会場内でのマスク着用のご協力をお願いします。

ご存知ですか?オーラルフレイル ~お口の機能を維持するために~

第23回市民公開講座 開催報告

日時 : 2022年11月13日(日) 午後2:00~午後4:20

会場 : 太田市学習文化センター 視聴覚ホール(太田市飯塚町 1549‐2)

主催 : 太田市・一般社団法人 太田新田歯科医師会

後援 : 太田市教育委員会・太田保健福祉事務所・太田市医師会

太田市薬剤師会・群馬県看護協会太田地区支部・太田栄養士会

太田歯科技工士会・群馬県歯科衛生士会東毛支部・群馬県歯科医師会

~医科歯科連携~

「そのいびき、息が止まっていませんか?

睡眠時無呼吸症候群かも??」

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、多くの行事が開催中止を余儀なくされておりましたが、3年ぶりに市民公開講座を開催する事となりました。開催に際しましては、検温、手指のアルコール消毒、会場内の換気、マスクの着用、人数制限や座席の配置など十分な感染予防対策を施し、第23回市民公開講座が開演されました。今回は、“いびき ・ 睡眠時無呼吸症候群”について、医科と歯科のそれぞれの分野から医科歯科の連携を踏まえてお話しして頂きました。

講演Ⅰ

演題:「そのいびき、大丈夫?~人生が変わる無呼吸治療~」
講師 :秀クリニック 院長 坂本 泰秀 先生

秀クリニック 院長 坂本 泰秀 先生

1,睡眠時無呼吸って何?

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnena Syndrome):サス

睡眠中に断続的に無呼吸を繰り返し、その結果、日中傾眠など種々の症状を呈する疾患の総称。

一晩(7時間)の睡眠中に30回以上の無呼吸(10秒以上の呼吸気流の停止)があり、そのいくつかは(ぐっすり眠っている)non‐REM睡眠期にも出現するものをSASと定義し、診断基準として、1時間当たりの無呼吸回数(Apnea Index : AI)が5回以上のものとした。

AHIとは無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index)の略で、1時間に5‐15回を軽度、15‐30回を中等度、30回以上を重度のSASと診断します。

睡眠時無呼吸(SAS)の原因は上気道の閉塞により低呼吸・無呼吸が起こり、慢性的な低酸素により諸症状・諸問題がおこります。

〈閉塞の原因〉

  • 形態的異常 : 肥満によって気道に脂肪が沈着する、扁桃腺肥大、アデノイド、巨舌、鼻中隔湾曲、小顎症
  • 機能的異常 : 気道を構成する筋肉の保持力低下➝舌根沈下など

睡眠時無呼吸の病態とは、睡眠➡無呼吸・低呼吸の発生➡血中酸素濃度の低下、血中CO2の上昇、胸腔内圧の低下➡呼吸の再開➡睡眠のサイクルを1晩中、何百回も繰り返す!!

〇SASの主な症状は、日中の眠気、いびき、夜間頻尿、熟睡感がない、起床時頭重感、肥満など。

〇SAS患者さんの主な特徴

身体的特徴 ・肥満・顎が小さい・扁桃肥大
合併しやすい疾患 ・高血圧・心疾患・糖尿病・不整脈などがある。

〇SASと交通事故との関係

追突事故の15%~33%は居眠り運転が原因とされており、1987年にSAS患者で交通事故を起こす頻度が高いことが報告されて以来、健常者に比べ2,5倍増加することが明らかになっています。

〇SAS患者は太っている人だけ?

SAS患者は確かに肥満度が高いが(平均BMI : 26,1)、38%は非肥満、5%は痩せている!

肥満だけがSASの原因ではなく、軟らかい食べ物が好まれる傾向により咀嚼回数が減り顎の未発達がSASリスクを増大させていて、矯正治療をしているお子さんが増加傾向である。

〇ステージⅢの乳がんより未治療のSASの方が生存率が低い⁉

未治療のSAS患者246名を対象とした8年間の追跡研究によれば、中等症以上のSAS患者の生存率は63%!国内における2019年のがん統計ではステージⅢの乳癌の5年生存率は79%!!決して軽く考えてよい病気ではなく、SASは放置したら大変です!!

 

2,クリニックでの実際の診察~初診から診断、治療について~

まず SASの問診票に受診された直接の理由・症状等を記載。いびきや睡眠の状態把握に関する質問を行う。理由は主にパートナーからの無呼吸の指摘・いびきの苦情。日中の眠気、居眠りによる交通事故や事故未遂。運送業の方の来院も増加。

続いて診察

問診票情報の確認、飲酒の状況、口腔内診察し、SASの説明や症状の確認。そして自宅でSAS簡易検査をしてもらいます。費用は3割負担で3,000円位、鼻の気流/いびき と動脈血酸素飽和度(SpO2)から睡眠中の呼吸状態を確認。自宅での簡易検査の結果をもとに再診、明らかに正常~ごく軽症であれば終診、いびきを気にされている場合は、チンストラップの装着やマウスピース作成の為に歯科へ紹介。

SASを疑う方には精密検査(PSG検査)となり、夕方からの1泊2日の夜だけ入院の検査となります。脳波検査を含み、睡眠深度や呼吸状態、心電図や足のピクツキなど10種類ほどの生理機能を確認する検査で、費用は3割負担で3~5万円前後と高額です。明らかに重症の方は即CPAP治療となります!!

CPAP療法の原理

CPAP治療は閉塞した上気道に陽圧をかけ、気道を開存させます。閉塞型睡眠時無呼吸症候群は軟口蓋や舌根の沈下により気道が閉塞し、無呼吸が発生する。CPAPは鼻マスクを介して、陽圧の空気を送り込み、上気道を広げ上気道の開存を補助する治療となります。

 

3,そのいびき、大丈夫?~人生が変わる無呼吸治療~

治療が必要なSAS患者は2019年の報告によると日本国内で940万人以上と推測されていますが、CPAP治療をしている患者は2021年現在65万人。運送業を中心とした簡易検査によるスクリーニング(SAS検診)も近年普及しつつあるが、潜在患者が圧倒的多数存在します。

SAS患者は日中の過剰な眠気といった症状や生活の質の低下だけでなく高血圧・不整脈・虚血性心疾患・脳血管障害・突然死といった生命予後に大きくかかわる疾患やうつ病などと密接に関連し、交通事故など大きな社旗問題に発展する危険もあります。そのためには、SASも早期に積極的に治療をすべきで、きちんと受診し検査を受けることが重要ですが、日常生活で気をつけると良い事もいくつかあります。

最も「安い」治療法は「ダイエット」、だけど…

SAS患者の7割は肥満。痩せさえすれば一定割合改善します。治療すべきレベルのSAS患者はCPAPやマウスピース治療を並行すべきですが、肥満傾向の方は、ベースラインの改善の為にダイエットを!!

日常でできる予防法  ベロ体操・その他

〇舌・口輪筋の『筋トレ・筋活!』舌を思いっきり前に出して15秒!

あいうべ体操:口呼吸から鼻呼吸に転換するのに有効。お風呂でおすすめ。「あー」口を大きく開く。

「いー」口を大きく横に開く。「うー」口を強く前に突き出す。「べー」舌を突き出し下に伸ばす。

ベロ回し体操:できるだけ大げさにやりましょう!寝る前にどうでしょう。舌を大きく前に出す(5回)。唇を閉じて舌で歯ぐきをグルっとなめる(右回り5回、左回り5回)。舌で左右の頬を強く押す(左右5回ずつ)

〇横向き寝:あおむけに寝ると重力に影響で舌が落ち込み気道が狭くなるので、横向きで寝る。

〇禁煙:喫煙はのどの粘膜の炎症やむくみ、低酸素の原因。

〇鼻炎治療:鼻が詰まると鼻からの気流が減少し、のどを広げる圧力が弱まります。鼻の通りをよくすることも大切です。

〇飲酒量を控える:アルコールには筋肉を弛緩させる作用があり、舌やあごの筋肉が緩んで気道を圧迫しやすくなります。

実際にCPAP治療をした患者さんの感想は、最初の一週間くらいは効果の実感がなかったようですが、2,3週間すると装置の装着にも慣れ、日中の眠気や起床時のだるさはほとんど感じなくなり、CPAP治療の有効性を実感したとの事でした。

講演Ⅱ

演題:「睡眠時無呼吸症候群 歯科(マウスピース)での治療」
講師 :  井田歯科クリニック 副院長 井田 順子 先生

井田歯科クリニック 副院長 井田 順子 先生

皆さんは良く眠れていますか?最近は、睡眠がブームですね。枕、サプリメント、乳酸菌飲料、スマートフォンのアプリケーションなどなど、熟睡せんがための様々な物が次々と出てきております。お使いになられている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

それらをお使いになられて、よく眠れましたでしょうか?

家族からのいびきの苦情はなくなりましたでしょうか?

睡眠の質と量、良く眠れることは、健康維持に重要です。睡眠時無呼吸症候群など、睡眠の病気は全身に関わる病気の原因になります。

 

〇睡眠時無呼吸の治療の担当科

精神神経科・呼吸器内科・神経内科・耳鼻咽喉科・代謝内科・泌尿器科・循環器内科・外科・小児科・歯科など多くの科で担当しており、歯科も担当科のひとつとなっております。

〇歯科、医科における睡眠時無呼吸の治療

医科では、nCPAP治療・耳鼻咽喉科的手術・投薬などの治療方法があります。

歯科では、OA(Oral Appliance) : 口腔内装置・マウスピース治療や口腔外科的手術があります。

また、睡眠衛生指導や睡眠体位の指導は医科歯科それぞれで行う事があります。

〇睡眠時無呼吸の治療における医療連携

  • 医科での睡眠時無呼吸の診断(睡眠検査)➝歯科へ打診
  • 歯科的診断(問診、視診、内視鏡検査、X線検査)➝OA治療が可能
  • 治療(OA治療)➝医科へ評価を依頼
  • OA装着時の睡眠評価(睡眠検査)➝治療ゴール
  • 管理(睡眠時無呼吸・OA・口腔の管理)➝必要に応じて
  • 再診断・再評価

〇睡眠時無呼吸になりやすいタイプ

肥満型  :①顎下軟組織の過多 ②首が太い

小下顎型  :①小下顎 ②首が長い

下顎歯列の狭窄:歯列の狭窄によって舌が後方移動し、咽頭が狭窄して睡眠時無呼吸が引き起こされやすい。

口蓋扁桃肥大:Ⅱ度(Tonsillar grade)の口蓋扁桃肥大がある。

〇OA(口腔内装置)の種類

・下顎前方移動型と舌前方牽引型がありますが、舌前方牽引型は使用が困難であることから現在はあまり使用されておりません。

下顎前方移動型は、更に一体型と分離型があり、一体型はハードタイプとソフトタイプがあります。分離型は調整機能がある物とない物があります。

〇睡眠時無呼吸になりやすい形態的特徴

  • 鼻閉
  • 肥満による顎下軟組織の肥大
  • 小下顎
  • 扁桃肥大
  • 舌骨低位
  • 頭部前屈

〇OA治療のメカニズム

OA(マウスピース・スリープスプリント)を装着することにより、下顎を前方に移動させ気道を開存し睡眠時無呼吸を改善する治療法です。

〇OA治療の症例報告

  • 昼間の眠気の訴え

睡眠時無呼吸症候群の診断・OA製作依頼、AHI;32.5回/時間・SpO2低下

OA装着によりAHI;15回/時間・SpO2低下の改善し昼間の眠気が改善された。

  • OSASの診断で16年前に大阪の耳鼻科で手術、心疾患あり。3年ほどで症状悪化。

群馬の病院で検査、AHI;78回/時 重症でCPAPの適応だが、OA装着によりAHI;4.8回/時 酸素低下なし。

  • 12歳小学生 うつ病で薬を服用・不登校

母親が、夜間のいびきが酷いと、呼吸器内科を受診 AHI;10.3回/時、低呼吸が主体。内服薬の影響?OA装着 AHI;6,6回/時 うつ症状の改善・薬は不要 学校への登校

  • 初診時中学生 平成20年12月 部活中に意識不明に救急車で搬送、CT・MRI・脳波検査するも診断つかず。平成21年1月から3月まで月に2.3度意識喪失になる。平成21年4月学校に行けなくなる。5月脳神経外科受診するも異常なし。普段の生活の問診から、中学1年から夜更かし・睡眠時間少ない。平成21年5月 当院受診 午前中起きられない、昼夜逆転。東京の睡眠クリニックに対診、『睡眠相後退症候群』の診断で時間生物学的治療。内服薬と生活時間の見直し。約1ヶ月で改善 学校への登校。
  • AHI;15,1回/時・いびき指数28,9/時 軽度から中等度のOSASの診断

2年前にOA装着するも改善なし 当院にてOA作成。AHI;12,9回/時・いびき指数20,2/時にやや改善。令和3年7月再来され、新たにOA作成。AHI;9,4回/時・いびき指数6,4/時に改善

しかしながら、患者さんの眠気の改善なし。通勤時、運転時の強い眠気。CPAPとOAと併用・口テープ使用。患者さんへの詳しい問診 23時に入眠、2時に目が覚めることあり。4時起床、6時30分出発、運転中に強い眠気。7時30分仕事開始。

それぞれの患者さんの睡眠障害への対応が必要である。

まとめ

十分な睡眠は健康を維持するために重要です。日々の生活を振り返って、睡眠について考えて頂きたい。心配な方は早めに受診してください。

 

今日の講演が皆様の健康に寄与出来れば幸いです。と締めくくり第23回市民公開講座は終焉となりました。

第23回市民公開講座

 ―食べること、健康であること、美しくあること、全ては人々の幸せのために!―

文責 太田新田歯科医師会 市民公開講座運営委員会 増田康展

第23回市民公開講座開催のお知らせ

第23回市民公開講座を開催します

日 時 令和4年11月13日(日) 14:00~16:20 (開場 13:30)

場 所 太田市学習文化センター 視聴覚ホール (太田市飯塚町1549-2)

テーマ ~医科歯科連携~

「そのいびき息が止まっていませんか? 睡眠時無呼吸症候群かも??」

講演1

演題:「そのいびき、大丈夫? ~人生が変わる無呼吸治療~ 」
講師:秀クリニック 院長 坂本 泰秀 先生

講演2

演題:「睡眠時無呼吸症候群 歯科(マウスピース)での治療 」
講師:井田歯科クリニック 副院長 井田 順子 先生

定 員 200人

入場料 無料

主 催 太田市・一般社団法人太田新田歯科医師会

※開催にあたり新型コロナウイルス感染症感染予防対策のため入場者数を半分に制限させていただきました。

 

そのいびき、大丈夫? ~人生が変わる無呼吸治療~