矯正治療を受けられる前に正しい理解を ~大人と子供の治療の違い~

矯正治療とは、悪い歯並びや咬み合わせを、きちんと咬み合うようにして、きれいな歯ならびにするための歯科治療です。矯正の先進国アメリカ、ヨーロッパでは成人する前に60%もの人が矯正治療を受けます。日本でも年々着実に増え続けています。また、歯並びについての関心も高まり、成人されてから来院される方も増加傾向にあります。しかし、正しい知識を持たずに治療を受けられる方も多く、再治療を希望され来院される方が年々増加傾向にあります。

不正咬合は単純に歯の並びが原因とする疾患ではなく、上顎骨(上あご骨)と下顎骨(下あご骨)の大きさの違いから生じている場合が多い疾患(上顎前突症や下顎前突起症、上下顎前突症、開咬症、過蓋咬合症など)です。

同じ下顎骨の劣成長による上顎前突症(出っ歯)でも成長期にある子どもの矯正治療と全ての歯が永久歯である大人の矯正治療では、治療アプローチが異なります。一般的に矯正治療は一本一本の歯に矯正装置とワイヤーを用いて行う治療と認知されています。このような矯正装置は、主に大人の矯正治療で用いられます。大人の矯正治療で上顎骨と下顎骨の前後的な大きさの違いを改善するには、一般的に上顎の左右側第一小臼歯抜歯を行って、前歯を後退させる治療が多く選択されます。一方、子どもの矯正治療では、乳歯から永久歯への交換期にある時期は成長を利用して、上顎骨と下顎骨の前後的不調和の改善がきる大切な時期です。成長をコントロールすることができる時期は限られています。治療は骨格の治療を行う一期治療(フェーズ1)と骨格の改善がなされた後に歯並びのみの治療を行う二期治療(フェーズ2)の二段がまえの進め方をします。治療は一人一人の成長発育を見極めて行います。特に上顎骨と下顎骨の前後的不調和が原因の場合には早期の骨自体への治療が重要です。このような骨格をコントロールする治療を顎矯正治療と言われています。顎矯正治療が可能な時期は約7歳から11歳です。顎矯正治療はすべての不正咬合に適用できます。おもに機能的矯正装置を用いて治療が行われます。低年齢から一期治療を行うことによって過剰発育にある骨の抑制や劣成長にある骨の前方成長促進が可能であり、二期治療における小臼歯抜歯の回避や治療期間の短縮化が期待できます。このような顎矯正治療の適用には正確な診断による治療計画と適切な矯正装置の選択、効率的な手法が大切です。また適用できる時期も限られていることから、治療に関してより深い理解を持ってから治療を受けられることが大切であると思われます。